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東京高等裁判所 平成3年(ネ)3841号 判決 1992年6月29日

宇都宮市塙田三丁目五番二四号

控訴人

橋本和夫

東京都千代田区霞が関一丁目一番一号

被控訴人

右代表者法務大臣

田原隆

右指定代理人

門西栄一

神谷宏行

奥原康之

嶋田恵一

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  控訴の趣旨

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人は、控訴人に対し金100万円を支払え。

3  控訴人事務所宇都宮市塙田三丁目五番二四号橋本クリニックより不法に取得した記録資料(転記した部分等はこれ以上特定できないが、例えば、日本勧業角丸証券の八月三一日付取引報告書、東京証券の八月二八日付名義書換えのご案内書類、東京証券の使用済み封筒、山種証券よりの使用済み封筒、京樽のご優待券並びに弊社商品「焼きのり」贈答のご案内などからメモしたもの)を返却し、かつ今後の使用を禁ずる。

4  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  控訴の趣旨に対する答弁

第二  当事者双方の事実の主張は、次のとおり付加するほかは、原判決事実摘示記載のとおりであり、証拠の関係は、本件記録中の証拠目録(原審・当審)記載のとおりであるから、それぞれこれらを引用する。

1  原判決書三枚目裏八行目の「収集した」から同九行目の「行政行為に」までを「押収し記録した資料の返還及びこれらを」と改める。

2  原判決書四枚目表二行目の「原告が」の「が」を削り、同末行の「否認するが」を「否認し」と改める。

3  原判決書五枚目裏一〇行目の「書き写すそうと」の「す」を削る。

理由

一  当裁判所も、控訴人の本訴請求中損害賠償を求める部分は理由がなく、棄却すべきものと判断する。その理由は、次のとおり付加するほかは、原判決理由第一ないし第五項説示のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決書六枚目裏九行目の「原告が肩書住所地」の「が」を削り、同七枚目表五行目の「窺わせる」から同八行目冒頭の「子」までを「認めるに足りる証拠はなく、かえって、証人大沢稔、同福田紀子の各証言によれば、右係官らが、控訴人の所得税の確定申告の正確性を確認する目的で、同日午後、税務調査のため右事業所を訪ねたところ、右事業所は閉まっていて、控訴人は不在であったこと、そこで右係官らが暫く待っていると、当時控訴人事業所で受付等の事務を行っていた女子職員(福田紀子)が来て鍵を開けたので、右係官らは同」と改める。

2  原判決書七枚目裏五行目から同末行までを次のとおり改める。

「 しかしながら、右主張に副う控訴人の供述は証人大沢、同福田の各証言に照らし採用できず、かえって、右各証言及び控訴人の本人尋問の結果(一部)によれば、

1 右係官らが控訴人事業所の待合室で控訴人が戻ってくるのを待っていると、午後二時ころ控訴人から電話がかかってきた。そこで、前記女子職員(福田紀子)は控訴人に対し、税金の件で右係官らが来て待っていると伝え、さらに控訴人と直接話したいという右係官らの要望により電話を替わろうとしたところ、控訴人は午後三時ころに戻ると言って電話を切ってしまった。

その後も、右係官らは、待合室で控訴人を待っていたが、その間室内で資料を収集するようなことはなく、女子職員からも、退去を求められたりするようなことはなかった。」

3  原判決書八枚目表一行目から五行目までを削り、同六行目の「3」を「2」に改め、同末行から同裏一行目にかけての「薬品仕入伝票や」を削り、同六行目の末尾に「。また、右係官らは、控訴人に対し、ごみ袋の中から見出した株の売買に関する書類等を持ち帰りたいと申し入れたが、控訴人が拒絶したので右書類を返還した。控訴人は、右係官らに対し、右書類等の一部を写したものも引き渡すように要求したが、右係官らはこれに応じなかった。」を加え、同七行目の「ことが認められ」を「以上の事実が認められ」と改め、同九行目の「それ自体は、」を削り、同行の「質問検査」から末行の「あるうえ」までを「質問検査権の行使ではなく、右職員の同意を得て税務調査のために待機しその準備をしていたにすぎないから、別段違法視されるようなものではないし」と改める。

4  原判決書九枚目表五行目から六行目にかけての「及び資料の返還等」を削り、同行の「求めるようでもあるが、」の次に「これらの事実を認めるに足りる証拠がないのみならず、」を加え、同七行目の「原告以外の者」から末行の「なりえず、」までを「控訴人以外の第三者であるというのであるから、単に調査の際に違法な行為があったとか、調査の方法に違法があったからといって、控訴人が罪を犯していると思わせるなど控訴人の人権を侵害することになるわけではない。」と、同裏一行目の「それを」から同二行目の「までもなく」までを「反面調査にあたって担当係官に控訴人の人権を侵害する格別の行為があったとの主張・立証もない以上」とそれぞれ改める。

二  控訴人の資料の返還請求等は、対象とする物件の特定がなお十分ではない面もあるが、例示もされたのでこの程度で満足するほかない。しかしながら、一に認定した各事実に照らすと、被控訴人にその返還義務や使用してはならない義務があるとは認めがたく、請求は理由がない。

三  以上の次第で、控訴人の本訴請求はいずれも理由がなく、これを棄却した原判決は相当で、本件訴訟は理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 上谷清 裁判官 満田明彦 裁判官 高須要子)

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